あさについてのどうわてきこうず |
朝に就ての童話的構図 |
冒頭文
苔(こけ)いちめんに、霧がぽしやぽしや降つて、蟻(あり)の歩哨(ほせう)は、鉄の帽子のひさしの下から、するどいひとみであたりをにらみ、青く大きな羊歯(しだ)の森の前をあちこち行つたり来たりしてゐます。 向ふからぷるぷるぷるぷる一ぴきの蟻の兵隊が走つて来ます。 「停(と)まれ、誰(たれ)かツ」 「第百二十八聯隊(れんたい)の伝令!」 「どこへ行くか」 「第五十聯隊 聯隊本部」
文字遣い
新字旧仮名
初出
「天才人 第六輯」1933(昭和8)年3月25日
底本
- 宮沢賢治全集8
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年1月28日