とさのちめい
土佐の地名

冒頭文

地名には意味の分らないのが多い。これはむしろ当然の事である。地名は保存されつつ永い年代の間に転訛(てんか)する、一方で吾々の通用語はまたこれと別の経路を取って変遷するからである。こういう訳であるから地名の研究が民族の過去の歴史を研究する上に重要な意義をもつのは勿論である。しかしそういう意味から地名を研究する場合には、現在の通用語をもって解釈しようとするのでは、無駄でないまでも有効でない。結局循環論

文字遣い

新字新仮名

初出

「土佐及土佐人」1928(昭和3)年1月

底本

  • 寺田寅彦全集 第六巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年5月6日