うちだひゃっけんし
内田百間氏

冒頭文

内田百間氏は夏目先生の門下にして僕の尊敬する先輩なり。文章に長じ、兼ねて志田流(しだりう)の琴に長ず。 著書「冥途(めいど)」一巻、他人の廡下に立たざる特色あり。然れども不幸にも出版後、直に震災に遭へるが為に普(あまね)く世に行はれず。僕の遺憾とする所なり。内田氏の作品は「冥途」後も佳作必ずしも少からず。殊に「女性」に掲げられたる「旅順開城」等の数篇等は戞々(かつかつ)たる独創造の作品な

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸時報 第四二号」1927(昭和2)年8月4日

底本

  • 芥川龍之介全集 第十五巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年1月8日