おうむのイズム
鸚鵡のイズム

冒頭文

この頃ピエル・ヴィエイという盲目の学者の書いた『盲人の世界』というのを読んでみた。 私は自分の専門としている科学上の知識、従ってそれから帰納された「方則」というものの成立や意義などについて色々考えた結果、人間の五感のそれぞれの役目について少し深く調べてみたくなった。そのためには五感のうちの一つを欠いた人間の知識の内容がどのようなものかという事を調べるのも、最も適当な手掛りの一つだと思われ

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1920(大正9)年11月

底本

  • 寺田寅彦全集 第七巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年6月5日