ぎかいのいんしょう
議会の印象

冒頭文

去年の十月だったか、十一月だったか、それさえどうしても思い出せない程にぼんやりした薄暗がりの記憶の中から、やっと手捜(てさぐ)りに拾い出した、きれぎれの印象を書くのであるから、これを事実と云えば、ある意味では、やはり一種の事実であるが、またある意味では、いつか見た事のある悪夢の記録と同じ種類のものであって、決して厳密な意味の事実ではない。 ある朝の事である。起きた時から何となく頭の工合が

文字遣い

新字新仮名

初出

1924(大正13)年

底本

  • 寺田寅彦全集 第七巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年6月5日