えいがざっかん(ご) |
映画雑感(Ⅴ) |
冒頭文
一 永遠の緑 この英国製映画を同類の米国製レビュー映画と比べると一体の感じが随分ちがっている。後者の尖鋭なスマートな刺戟の代りに前者にはどこかやはり古典的な上品な滋味があるような気がする。 この映画の頂点(やま)はヒロインが舞台で衣裳をかなぐり捨てブロンドのかつらを叩きつけて煩わしい虚偽の世界から自由な真実の天地に躍(おど)り出す場面であって、その前のすべてのストーリーはこの頂点へ
文字遣い
新字新仮名
初出
「映画と演芸」1935(昭和10)年7月
底本
- 寺田寅彦全集 第八巻
- 岩波書店
- 1997(平成9)年7月7日