にかかいてんらんかいざっかん
二科会展覧会雑感

冒頭文

同じ展覧会を見て歩くのでも、単に絵を見て味わい楽しもうという心持で見るのと、何かしら一つ批評でもしてみようという気で見るのとでは、見る時の頭の働き方が違うだけに、その頭に残る印象にもかなりの差があり得る訳である。尤もほんとうに絵を味わい楽しむためには、ある意味での批評をしなければならない事は勿論であるが、しかし、意識的に批評のための批評をしようという心持があっては、芸術品を楽しみ味わう邪魔になるば

文字遣い

新字新仮名

初出

「明星」1924(大正13)年10月1日

底本

  • 寺田寅彦全集 第八巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年7月7日