かじつ |
佳日 |
冒頭文
これは、いま、大日本帝国の自存自衛のため、内地から遠く離れて、お働きになっている人たちに対して、お留守(るす)の事は全く御安心下さい、という朗報にもなりはせぬかと思って、愚かな作者が、どもりながら物語るささやかな一挿話である。大隅(おおすみ)忠太郎君は、私と大学が同期で、けれども私のように不名誉な落第などはせずに、さっさと卒業して、東京の或る雑誌社に勤めた。人間には、いろいろの癖(くせ)がある。大
文字遣い
新字新仮名
初出
「改造 第二十六巻第一号」改造社、1944(昭和19)年1月1日
底本
- 太宰治全集6
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1989(平成元)年2月28日