朱鷺船(ときふね) 一 濡色(ぬれいろ)を含(ふく)んだ曙(あけぼの)の霞(かすみ)の中(なか)から、姿(すがた)も振(ふり)もしつとりとした婦(をんな)を肩(かた)に、片手(かたて)を引担(ひつかつ)ぐやうにして、一人(ひとり)の青年(わかもの)がとぼ〳〵と顕(あら)はれた。 色(いろ)が真蒼(まつさを)で、目(め)も血走(ちばし)り、伸(の)びた髪(かみ)が額