とうせいふたりむすめ |
当世二人娘 |
冒頭文
その一 女学校これはこれはの顔ばかりと、人の悪口にいひつるは十幾年の昔にて、今は貴妃小町の色あるも、納言式部の才なくてはと、色あるも色なきも学びの庭へ通ふなる、実に有難の御世なれや、心利きたる殿原は女学校の門に斥候を放ちて、偵察怠りなきもあり、己れ自ら名のり出て、遠からむものは音にも聞け、近くは寄りて眼にも見よと、さすがにいひは放たねど、学識の高きを金縁の眼鏡にも示し、流行に後れぬ心意気を、
文字遣い
新字旧仮名
初出
「世界之日本」1897(明治30)年3月
底本
- 紫琴全集 全一巻
- 草土文化
- 1983(昭和58)年5月10日