こまいぬ
こま犬

冒頭文

一 春の雪ふる宵に、わたしが小石川の青蛙堂に誘い出されて、もろもろの怪談を聞かされたことは、さきに発表した「青蛙堂鬼談」にくわしく書いた。しかしその夜の物語はあれだけで尽きているのではない。その席上でわたしがひそかに筆記したもの、あるいは記憶にとどめて書いたもの、数(かぞ)うればまだまだたくさんあるので、その拾遺というような意味で更にこの「近代異妖編」を草(そう)することにした。そのなかには

文字遣い

新字新仮名

初出

「現代」1925(大正14)年11月

底本

  • 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
  • 原書房
  • 1999(平成11)年7月2日