りこんびょう |
離魂病 |
冒頭文
一 M君は語る。 これは僕の叔父から聴かされた話で、叔父が三十一の時だというから、なんでも嘉永の初年のことらしい。その頃、叔父は小石川の江戸川端(えどがわばた)に小さい屋敷を持っていたが、その隣り屋敷に西岡鶴之助という幕臣が住んでいた。ここらは小身の御家人(ごけにん)が巣を作っているところで、屋敷といっても皆小さい。それでも西岡は百八十俵取りで、お福という妹のほかに中間(ちゅうげん
文字遣い
新字新仮名
初出
「新小説」1925(大正14)年7月
底本
- 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
- 原書房
- 1999(平成11)年7月2日