なつめせんせいのはいくとかんし |
夏目先生の俳句と漢詩 |
冒頭文
夏目先生が未だ創作家としての先生自身を自覚しない前に、その先生の中の創作家は何処(どこ)かの隙間を求めてその創作に対する情熱の発露を求めていたもののように思われる。その発露の恰好(かっこう)な一つの創作形式として選ばれたのが漢詩と俳句であった。云わば遠からず爆発しようとする火山の活動のエネルギーがわずかに小噴気口の噴煙や微弱な局部地震となって現われていたようなものであった。それにしてもそのために俳
文字遣い
新字新仮名
初出
「漱石全集 第十三巻 月報第三号」1928(昭和3)年5月10日
底本
- 寺田寅彦全集 第十二巻
- 岩波書店
- 1997(平成9)年11月21日