「ファン」について
「ファン」について

冒頭文

私は今日までファンについてあまり考えたことがない。なぜならば第一私はファンという言葉が好きになれないのだ。 ファンという言葉が私の頭の中に刻みつけている印象は、私にとつてあまり幸福なものではない。 私は本当のファンがどういうものかを知らない。ただ私が自分の目で見てきたファンというものは不幸にも喧騒にして教養なき群衆にすぎなかつた。 私は残念ながらその人たちを尊敬する気

文字遣い

新字新仮名

初出

「ムウビイ」1936(昭和11)年1月14日号

底本

  • 新装版 伊丹万作全集2
  • 筑摩書房
  • 1961(昭和36)年8月20日