しゅじゅのことば |
侏儒の言葉 |
冒頭文
星 太陽の下に新しきことなしとは古人の道破した言葉である。しかし新しいことのないのは独り太陽の下ばかりではない。 天文学者の説によれば、ヘラクレス星群を発した光は我我の地球へ達するのに三万六千年を要するさうである。が、ヘラクレス星群と雖(いへど)も、永久に輝いてゐることは出来ない。何時か一度は冷灰のやうに、美しい光を失つてしまふ。のみならず死は何処へ行つても常に生を孕んでゐる。光を
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文芸春秋 第一年第一号~第三年第一一号」1923(大正12)年1月1日~1925(大正14)年11月1日
底本
- 芥川龍之介全集 第十三巻
- 岩波書店
- 1996(平成8)年11月8日