みすじまちかいわい |
三筋町界隈 |
冒頭文
一 この追憶随筆は明治二十九年を起点とする四、五年に当るから、日清(にっしん)戦役が済んで遼東還附(りょうとうかんぷ)に関する問題が囂(かまびす)しく、また、東北三陸の大海嘯(だいかいしょう)があり、足尾銅山鉱毒事件があり、文壇では、森鴎外の『めさまし草』、与謝野鉄幹(よさのてっかん)の『東西南北』が出たころ、露伴の「雲の袖(そで)」、紅葉(こうよう)の「多情多恨」、柳浪(りゅうろう)の「今
文字遣い
新字新仮名
初出
「文藝春秋」1937(昭和12)年1月号
底本
- 斎藤茂吉随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1986(昭和61)年10月16日