さんじゅうちゅうがえりのき |
三重宙返りの記 |
冒頭文
僕は、このところ二三ヶ月、からだの工合がよくない。それでこの日、文壇(ぶんだん)航空会にも、残念ながら特殊飛行は断念して、辞退を申出ておいたのであった。殊(こと)に、その前々日は終日(しゅうじつ)家にいて床についていたし、その前日は、炬燵(こたつ)の中で終日、日米関係の本を読んでいた始末であった。だから当日は、ふらふらするからだを豊岡まで搬(はこ)んだようなわけで、特殊飛行をする意志は毛頭(もうと
文字遣い
新字新仮名
初出
「航空朝日」1941(昭和16)年4月号
底本
- 海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション
- 三一書房
- 1991(平成3)年10月15日