せいじにかんするずいそう |
政治に関する随想 |
冒頭文
私は生れてからこのかた、まだ一度も国民として選挙権を行使したことがない。 私はそれを自慢するのではない。むしろ一つの怠慢だと思つている。しかし、ここに私が怠慢というのは、私が国民としての義務を怠つたという理由からではなく、たんに芸術家として、与えられた観察の機会をむだにしたという理由からである。すなわち、いまだかつて投票場に近寄つたこともない私は、投票場というものがどんな様子のものかまつ
文字遣い
新字新仮名
初出
「キネマ旬報 再建第三号」1946(昭和21)年6月1日
底本
- 新装版 伊丹万作全集1
- 筑摩書房
- 1961(昭和36)年7月10日