じゅうねんごのえいがかい
十年後の映画界

冒頭文

一千九百三十九年一月×日 街裏の酒場(バア)「騒音と煙(ショル・ウント・ラウフ)」の一隅に於て、酔っぱらいの私がやはり酔っぱらいのオング君を、十年振りに見出したと思いたまえ。オング君は、一昔前と変らぬリボンをネクタイに結んだ懐しい姿で、赤ラベルの安三鞭酒(シャンペン)を煽りながら、私に呼びかけたのである。 『やあ、新年お目出度う。……久しくお遇いしませんでしたが、髭なんぞ生やして、

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1929(昭和4)年1月

底本

  • アンドロギュノスの裔
  • 薔薇十字社
  • 1970(昭和45)年9月1日