ロマンしゅみしゃとして |
浪漫趣味者として ―― Ibi omnis effusus labor ! ―― |
冒頭文
H——氏と云って、青年の間に評判の高いロマンティストと懇意を得たことがあった。 H——氏は、散歩に出る時の外は、何もしないで、下宿の好ましい調度で品よく飾った部屋に寝ころんでいることが多かった。少からぬ親の遺産が預金してあるという噂であった。 初対面の時、私は自分も予々(かねがね)優美なロマンティストの生活を望んでいた旨を告げた。 『これは生え抜きのものです——』とH——
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」博文館、1929(昭和4)年11月
底本
- アンドロギュノスの裔
- 薔薇十字社
- 1970(昭和45)年9月1日