さいまるゆき |
才丸行き |
冒頭文
起きて見ると思ひの外で空には一片の雲翳も無い、唯吹き颪が昨日の方向と變りがないのみである、 滑川氏の案内で出立した、正面からの吹きつけで體が縮みあがるやうに寒い、突ンのめるやうにしてこごんだ儘走つた、炭坑會社の輕便鐵道を十町ばかり行つて爪先あがりにのぼる、左は崖になつて、崖の下からは竹が疎らに生えて居る、木肌の白い漆がすい〳〵と立ち交つて居る、漆の皮にはぐるつとつけた刄物の跡が見える、山
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「馬醉木 第二卷第三號」1905(明治38)年5月29日
底本
- 長塚節全集 第二巻
- 春陽堂書店
- 1977(昭和52)年1月31日