かじやのこ |
鍛冶屋の子 |
冒頭文
何時まで経つてもちつとも開けて行かない、海岸から遠い傾いた町なんだ。 ——街路はせまい、いつでも黒くきたない、両側にぎつしり家が並んでゐる、ひさしに白いほこりが、にぶい太陽の光にさらされてゐる、通る人は太陽を知らない人が多い、そしてみんな麻ひしてゐる様だ—— 新次は鍛冶屋にのんだくれの男を父として育つた少年であつた。母は彼の幼い時に逝つた。兄があつたが、馬鹿で、もういゝ年をして
文字遣い
新字旧仮名
初出
「新美南吉十七歳の作品日記」牧書店、1971(昭和46)年7月
底本
- 日本児童文学大系 第二八巻
- ほるぷ出版
- 1978(昭和53)年11月30日