とりえもんしょこくをめぐる
鳥右ヱ門諸国をめぐる

冒頭文

一 鳥山鳥右ヱ門は、弓矢を抱へて、白い馬にまたがり、広い庭のまんなかに立つてゐました。しもべの平次が犬をひいてあらはれるのを待つてゐたのです。 その、しもべの平次を、主人の鳥右ヱ門はあまり好きではありませんでした。平次はかれこれ二月ばかりまへ、鳥右ヱ門の館(やかた)にやとはれて来た、背の低い、体のこつこつした、無口な男です。どこの生まれなのか、自分でもよく知らないといつてゐまし

文字遣い

新字旧仮名

初出

「花のき村と盗人たち」帝国教育会出版部、1943(昭和18)年9月30日

底本

  • 日本児童文学大系 第二八巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日