みみ |
耳 |
冒頭文
一 ある晩、久助君は風呂にはいつてゐた。晩といつても、田舎で風呂にはいるのは暗くなつてからである。風呂といつても、田舎の風呂は、五右衛門風呂といふ、ひとりしかはいれない桶のやうな風呂である。 久助君は、つまらなさうに、じやばじやばと音をさせてはいつてゐた。風呂の中でハモニカを吹くことと歌をうたふことは、このあひだおとうさんから、かたく禁じられてしまつたのである。「風呂の中でハモ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「少国民文学」東宛書房、1943(昭和18)年5月
底本
- 日本児童文学大系 第二八巻
- ほるぷ出版
- 1978(昭和53)年11月30日