くま

冒頭文

熊は月夜に声きいた。 どこか遠くでよんでゐた。 熊はむくりと起きて来た。 檻の鉄棒ひえてゐた。 熊は耳をばすましてた。 アイヌのやうな声だつた。 熊は故郷を思つてた。 落葉松林(からまつばやし)を思つてた。 熊はおゝんとほえてみた。 どこか遠くで、 こだました。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「赤い鳥」赤い鳥社、1932(昭和7)年8月

底本

  • 日本児童文学大系 第二八巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日