かいかんウルフごう
怪艦ウルフ号

冒頭文

一 時は欧洲(おうしう)大戦の半ば頃(ごろ)、処(ところ)は浪(なみ)も煮え立つやうな暑い印度洋(いんどやう)。地中海に出動中の日本艦隊へ食糧や弾薬を運ぶ豊国丸(ほうこくまる)は、独逸(どいつ)商業破壊艦「ウルフ号」が、印度洋に向つたといふ警報を受けたので、帝国軍艦「伊吹(いぶき)」の保護を求めて、しきりに無電をかけながら、西へ西へと進んでゐた。 前部甲板の日覆(ひおひ)の下には、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少年倶楽部」1933(昭和8)年2月

底本

  • 日本児童文学大系 第一一巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日