くまといのしし |
熊と猪 |
冒頭文
一 紀州(きしう)の山奥に、佐次兵衛(さじべゑ)といふ炭焼がありました。五十の時、妻(かみ)さんに死なれたので、たつた一人子の京内(きやうない)を伴(つ)れて、山の奥の奥に行つて、毎日々々木を伐(き)つて、それを炭に焼いてゐました。或日(あるひ)の事京内は此(こ)んな事を言ひ出したのです。 「お父さん、俺(おれ)アもう此(こ)んな山奥に居るのは嫌(いや)だ。今日から里へ帰る。」 「そ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「金の船」キンノツノ社、1919(大正8)年12月
底本
- 日本児童文学大系 第一一巻
- ほるぷ出版
- 1978(昭和53)年11月30日