ダマスカスのけんじゃ |
ダマスカスの賢者 |
冒頭文
一 むかし、ダマスカスといふ町に、イドリスといふなまけものがゐました。貧乏なくせに、はたらくことがきらひなのですからたまりません。或(ある)とき、もういよ〳〵食べるものもなくなり、売りはらふものと言つたつて、ぼろッきれ一つさへないはめになりました。おかみさんは、 「これではもう二人でかつゑて死ぬばかりです。後生だから、どうぞ今日からお金をもうけに出て下さい。」と、泣いてたのみました。
文字遣い
新字旧仮名
初出
「赤い鳥」1927(昭和2)年2月
底本
- 日本児童文学大系 第一〇巻
- ほるぷ出版
- 1978(昭和53)年11月30日