たかいにたいするかんねん
他界に対する観念

冒頭文

悲劇必らずしも悲を以て旨とせず、厭世必らずしも厭を以て趣とせず、別に一種の抜く可からざる他界に対する自然の観念の存するものあり、この観念は以て悲劇を人心の情世界に愬(うつた)へしめ、厭世を高遠なる思想家に迎へしむ、人間ありてよりこの観念なきはあらず、或は遠く或は近く、大なるものあり、小なるものあり、宗教この観念の上に立ち、詩想この観念の糧(かて)に活(い)く。 この観念は世界の普通性なり

文字遣い

新字旧仮名

初出

「國民之友 一六九號~一七〇號」民友社、1892(明治25)年10月13日、23日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1974(昭和44)年6月5日