つかごしのはなし |
塚越の話 |
冒頭文
一 「塚越の奴は、——教室でラヴ・レターを書いてゐたさうだ——。一体彼奴は、俺達のこれまでの忠告を、何と思つてゐやがるんだらう。失敬な奴だ。」 「彼奴は俺達を馬鹿にしてゐるんだ。その時だけは好い加減に点頭いてゐるが、肚では舌を出して嗤つてやがるんだ。」 「改心の見込はないかな?」 「断然——鉄拳制裁と仕よう。」 私が、自習室へ入つて行つた時に恰度其処では斯んな相談が可決されたところだ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「若草 第七巻第四号」宝文館、1931(昭和6)年4月1日
底本
- 牧野信一全集第四巻
- 筑摩書房
- 2002(平成14)年6月20日