けいばのひ |
競馬の日 |
冒頭文
一 眠つても眠つても眠り足りないやうな果しもなくぼんやりした頭を醒すために私は、屡々いろいろな手段を講じる。 頭がぼんやりしてゐると私は、いつも飛んでもない失敗を繰り返す癖に怖れをもつてゐたからである。 「うんうん——と、はつきり点頭いてゐたから約束通り僕は今迄停車場で待つてゐたんですよ。がつかりしちやふな、ほんとうに未だ寝てゐるなんて酷いや!」 森だ! と私は、吃驚り
文字遣い
新字旧仮名
初出
「祖国 第二巻第十二号」學苑社、1929(昭和4)年12月1日
底本
- 牧野信一全集第三巻
- 筑摩書房
- 2002(平成14)年5月20日