さざんか
山茶花

冒頭文

ひとの世の男女の 行ひを捨てて五年 夫ならぬ夫と共(ともに)棲(す)み 今年また庭のさざんくわ 夫ならぬ夫とならびて 眺め居(ゐ)る庭のさざんくわ 夫ならぬ夫にしあれど ひとたびは夫にてありし つまなりしその昔より つまならぬ今の語らひ 浄(きよ)くしてあはれはふかし 今年また庭のさざんく

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1922(大正11)年1月2日

底本

  • 愛よ、愛
  • パサージュ叢書、メタローグ
  • 1999(平成11)年5月8日