くろんぼう |
くろん坊 |
冒頭文
一 このごろ未刊随筆百種のうちの「享和(きょうわ)雑記」を読むと、濃州(のうしゅう)徳山くろん坊の事という一項がある。何人(なんぴと)から聞き伝えたのか知らないが、その附近の地理なども相当にくわしく調べて書いてあるのを見ると、全然架空の作り事でもないらしく思われる。元来ここらには黒ん坊の伝説があるらしく、わたしの叔父もこの黒ん坊について、かつて私に話してくれたことがある。若いときに聞かされた
文字遣い
新字新仮名
初出
「文藝倶楽部」1925(大正14)年7月
底本
- 鷲
- 光文社文庫、光文社
- 1990(平成2)年8月20日