ばようき
馬妖記

冒頭文

一 M君は語る。 僕の友人の神原君は作州(さくしゅう)津山(つやま)の人である。その祖先は小早川隆景(たかかげ)の家来で、主人と共に朝鮮にも出征して、かの碧蹄館(へきていかん)の戦いに明(みん)の李如松(りじょしょう)の大軍を撃ち破った武功の家柄であると伝えられている。隆景は筑前の名島(なじま)に住んでいて、世に名島殿と呼ばれて尊敬されていたが、彼は慶長二年に世を去って、養子の金吾

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部」1927(昭和2)年2月

底本

  • 蜘蛛の夢
  • 光文社文庫、光文社
  • 1990(平成2)年4月20日