あたらしきこえ |
新しき声 |
冒頭文
(一) 同時代に生れ出た詩集の、一は盛(さか)へ他は忘れ去られた。「若菜集」と「抒情詩」。「若菜集」は忽ちにして版を重ねたが、「抒情詩」は花の如く開いて音もなく落ちて了つた。 島崎氏の「若菜集」がいかに若々しい姿のうちに烈しい情𤍠をこめてゐたかは、今更ここに言ふを須(もち)ゐないことではあるが、その撓(たゆ)み易き句法、素直に自由な格調、從つてこれは今迄に類(たぐひ)のなかつた新
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文章世界 〈文話詩話〉號」1907(明治40)年10月
底本
- 明治文學全集 69 島崎藤村集
- 筑摩書房
- 1972(昭和47)年6月30日