「あいびき」について |
「あひびき」に就て |
冒頭文
わたくしが長谷川二葉亭氏の名を知りはじめたのは「國民之友」に出た「あひびき」からである。明治二十一年の夏のころであつたが、わたくしは未だ中學の初年級であり、文學に對する鑑賞力も頗る幼稚で、その頃世間にもてはやされてゐた「佳人の奇遇」などを高誦してゐたぐらゐであるから、露西亞の小説家ツルゲーネフの短篇の飜譯といふさへ不思議に思はれ、ただ何がなしに讀んで見ると、巧に俗語を使つた言文一致體——その珍らし
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「二葉亭四迷」易風社、1909(明治42)年8月1日
底本
- 明治文學全集 99 明治文學囘顧録集(二)
- 筑摩書房
- 1980(昭和55)年8月20日