すなこや |
砂子屋 |
冒頭文
書房を展開せられて、もう五周年記念日を迎えられる由、おめでとう存じます。書房主山崎剛平氏は、私でさえ、ひそかに舌を巻いて驚いたほどの、ずぶの夢想家でありました。夢想家が、この世で成功したというためしは、古今東西にわたって、未だ一つも無かったと言ってよい。けれども山崎氏は、不思議にも、いま、成功して居られる様子であります。山崎氏の父祖の遺徳の、おかげと思うより他は無い。ちなみに、書房の名の砂子屋は、
文字遣い
新字新仮名
初出
「文筆」1940(昭和15)年10月30日
底本
- 太宰治全集10
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1989(平成元)年6月27日