むだい
無題

冒頭文

大井広介というのは、実にわがままな人である。これを書きながら、腹が立って仕様が無い。十九字二十四行、つまり、きっちり四百五十六字の文章を一つ書いてみろというのである。思い上った思いつきだ。僕は大井広介とは、遊んだ事もあまり無いし、今日まで二人の間には、何の恩怨(おんえん)も無かった筈だが、どういうわけか、このような難題を吹きかける。実に、困るのだ。大井君、僕は野暮(やぼ)な男なんだよ。見損っている

文字遣い

新字新仮名

初出

「現代文学」1942(昭和17)年6月28日

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日