よこづな
横綱

冒頭文

二、三年前の、都新聞の正月版に、私は横綱男女(みな)ノ川(がわ)に就(つ)いて書いたが、ことしは横綱双葉山に就いて少し書きましょう。 私は、角力(すもう)に就いては何も知らぬのであるが、それでも、横綱というものには無関心でない。或る正直な人から聞いた話であるが、双葉山という男は、必要の無いことに対しては返辞をしないそうである。お元気ですか。お寒いですね。おいそがしいでしょう。すべて必要の

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京新聞」1944(昭和19)年1月13日

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日