かっぱ
河童

冒頭文

どうか Kappa と発音して下さい。 序 これは或精神病院の患者、——第二十三号が誰にでもしやべる話である。彼はもう三十を越してゐるであらう。が、一見した所は如何にも若々しい狂人である。彼の半生の経験は、——いや、そんなことはどうでも善い。彼は唯ぢつと両膝をかかへ、時々窓の外へ目をやりながら、(鉄格子をはめた窓の外には枯れ葉さへ見えない樫の木が一本、雪曇りの空に枝を張つてゐた。)

文字遣い

新字旧仮名

初出

「改造 第九巻第三号」1927(昭和2)年3月1日

底本

  • 芥川龍之介全集 第十四巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年12月9日