あんごのしんにほんちり 06 ながさきチャンポン――きゅうしゅうのまき――
安吾の新日本地理 06 長崎チャンポン――九州の巻――

冒頭文

急行列車が駅にとまると、二人か三人の私服刑事らしき人物が車内の人物の面相を読みつつ窓の外を通りすぎる。私の終戦後の遠距離旅行はこの正月からのことであるから、こういう人物の駅々の影のような出迎えがいつごろから始まったのか知らないが、月を追うてこの出迎えが厳重に、どの駅でも規則正しく行われるようになってきた。 これには無論それだけの理由があるに相違ない。まず共産党幹部の地下潜入、朝鮮戦乱や国

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二九巻第一一号」1951(昭和26)年8月1日

底本

  • 坂口安吾全集 11
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年12月20日