かんぜんちょうあく
勧善懲悪

冒頭文

一 ざまあ見ろ。 可哀相に到頭落ちぶれてしまったね。報いが来たんだよ。良い気味だ。 この寒空に縮(ちぢみ)の単衣(ひとえ)をそれも念入りに二枚も着込んで、……二円貸してくれ。見れば、お前じゃないか。……声まで顫(ふる)えて、なるほど一枚ではさぞ寒かろうと、おれも月並みに同情したが、しかし、同じ顫えるなら、単衣の二枚重ねなどという余り聴いたことのないおかしげな真似は、よしたらど

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪文学」1942(昭和17)年9月、10月

底本

  • 夫婦善哉
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 1999(平成11)年5月10日