さざんか |
山茶花 |
冒頭文
平三爺は、病気で腰が痛むと言って、顔を顰(しか)めたり、自分で調合した薬を嚥(の)んだりしていたのであったが、それでも、山の畠に、陸稲(おかぼ)の落ち穂を拾いに行くのだと言って、嫁のおもんが制(と)めたにもかかわらず、土間の片隅からふごを取って、曲がりかけた腰をたたいたりしながら、戸外へ出て行った。 「落ち穂なんか、孩子(わらし)どもに拾わせたっていいのだから、無理しねえで、休んでればいいん
文字遣い
新字新仮名
初出
「文章倶楽部」1927(昭和2)年7月号
底本
- 佐左木俊郎選集
- 英宝社
- 1984(昭和59)年4月14日