せいぎのくにとじんせい
正義の国と人生

冒頭文

ゴオリキの「どん底」に現われた不思議な老人ルカの話によると、シベリアに「非常に貧乏で、惨な暮らし」をしていた或男が、「正義の国」を求めていた。この正義の国には「特別な人間」が住んでいて、しかも「立派な人間ばかりで、互に尊敬し合い、どんな些細なことにも助け合う」国であった。そしてこの男は、絶えずこの正義の国を探しに行く用意をしていたが、さなきだに貧乏だった彼は、これがためにますます貧乏となり、結局「

文字遣い

新字新仮名

初出

「他山の石 第6年17号 名古屋読書会報告」1939(昭和14)年9月

底本

  • 畜生道の地球
  • 中公文庫、中央公論社
  • 1989(平成元)年10月10日