ぶんげいかんしょうこうざ
文芸鑑賞講座

冒頭文

文芸上の作品を鑑賞する為には文芸的素質がなければなりません。文芸的素質のない人は如何なる傑作に親んでも、如何なる良師に従つても、やはり常に鑑賞上の盲人に了(をは)る外はないのであります。文芸と美術との相違はありますが、書画骨董を愛する富豪などにかう云ふ例の多いことは誰でも知つてゐる事実でありませう。しかし文芸的素質の有無と云ふことも程度によりけりでありますから、テエブルや椅子の有無のやうに判然とき

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸講座 第二号、第五号、第一二号」文藝春秋、1924(大正13)年10月10日、11月30日、1925(大正14)年4月3日

底本

  • 芥川竜之介全集 第十一巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年9月9日