しんけい |
神経 |
冒頭文
一 今年の正月、私は一歩も外へ出なかった。訪ねて来る人もない。ラジオを掛けっ放しにしたまま、浮浪者の小説を書きながら三※[#小書き濁点付き片仮名カ、321-上-4]日を過した。土蜘蛛のようにカサカサの皮膚をした浮浪者を書きながら、現実に正月の浮浪者を見るのはたまらなかった。浮浪者だけではない。外へ出れば到る所でいやでも眼にはいる悲しい世相を、せめて三※[#小書き濁点付き片仮名カ、321-上-
文字遣い
新字新仮名
初出
「文明 春季号」1946(昭和21)年4月
底本
- 定本織田作之助全集 第五巻
- 文泉堂出版
- 1976(昭和51)年4月25日