えたいの知れない不吉(ふきつ)な塊が私の心を始終壓へつけてゐた。焦燥と云はうか、嫌惡と云はうか——酒を飮んだあとに宿醉(ふつかよひ)があるやうに、酒を毎日飮んでゐると宿醉に相當した時期がやつて來る。それが來たのだ。これはちよつといけなかつた。結果した肺尖カタルや神經衰弱がいけないのではない。また脊を燒くやうな借金などがいけないのではない。いけないのはその不吉な塊だ。以前(いぜん)私を喜ばせたどんな