うたのくちょう
歌の口調

冒頭文

歌の口調がいいとか悪いとかいう事の標準が普遍的に定め得られるものかどうか、これは六かしい問題である。この標準は時により人により随分まちまちであってその中から何等かの方則といったようなものを抽(ぬ)き出すのは容易な事とは思われない。 しかし個人的には、たとえそれは自覚されないにしても、何かしら自ずから一定の標準をもっていて、それに当嵌(あては)めて口調の善し悪しを区別している事だけは否定し

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝の光」1922(大正11)年3月

底本

  • 寺田寅彦全集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年11月21日