「かつらがわ」(つりうた)をひょうしてじょうしにおよぶ |
「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ |
冒頭文
まづ祝すべきは市谷(いちがや)の詩人が俗嘲を顧みずして、この新らしき題目を歌ひたることなり。 残花道人嘗(か)つて桂川を渡る、期は夜なり、風は少しく雨を交(まじ)ゆ、「昨日(きのふ)も今日(けふ)も五月雨(さみだれ)に、ふりくらしたる頃なれど」とあるを見れば梅雨の頃かとぞ思ふ。「霧たちこめし水の面(も)に、二ツの光りてらすなり、友におくれし螢火か、はた亡き魂かあはれ〳〵」と一面惨絶の光景
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文學界 七號」文學界雜誌社、1893(明治26)年7月30日
底本
- 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
- 筑摩書房
- 1969(昭和44)年6月5日