げきしのぜんといかん
劇詩の前途如何

冒頭文

文界の筮卜者(ぜいぼくしや)は幾度となく劇詩熱の流行を預言せり、然るに今年までは当れるにもあらず、当らぬにもあらず、これといふ傑作も出ざれば、劇詩の流行とも言ふべき程の事もあらず。小説界には最早(もはや)二三世紀とも言ふべき程の変遷あり、批評界も能(よ)く変じ能く動きたるに、劇詩のみは依然として狂言作者の手に残り、如何(いかん)ともすべき様なし。 劇詩の消長は劇界の動勢と密接の関係を有す

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文學界 十二號」文學界雜誌社、1893(明治26)年12月30日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年6月5日